第51回 IFLA世界大会 in ブエノスアイレス レポート

永村裕子

6月7日~9日でIFLA 世界大会が開催されました。

日本からは、IFLA Japan会長の高野文彰氏と永村裕子が出席しました。

感想を交えながら、大会の模様をレポート致します。

■会場

会場はブエノスアイレスの東側、ラプラタ川河口に近い運河沿いの再開発地域で、近年倉庫だった同じ型のレンガ倉庫群のうち、4棟を「キリスト教大学」として改装された校舎の1つを利用して行われました。地下の講堂にパイプ椅子が並べられた、カジュアルな会場で、学生コンペの入賞作品は、廊下の壁に展示されていました。

丁度、6月初旬は秋の深まる頃で、トウカエデや菩提樹は葉を落とし、銀杏は黄色く色づいていました。朝は息が白くなり、会期中青空の日もあれば、テクニカルビジトの日は雨天となり、選択によっては中止される波乱があったりしました。

会場となった.キリスト教大学
会場となった.キリスト教大学

■参加者

今回は1日800人ほどと言われています。初日は講堂が埋まりましたが、その後は半分くらいでしょうか。各国の常連(代表や会長)の顔ぶれの中、中南米は国の大小関わらずまんべんなく揃っていたと思います。気になったのは、ブラジルの姿が見られなかったことです。また、来年のアメリカ地区大会をホストする、ボリビアの代表団が盛んにPR活動に励んでいたのが印象的でした。アジアからは、日本、中国、シンガポール、マレーシア、韓国からの参加が見られました。もう1つ気になったのは、地元の学生の参加が少なく感じたことと、地元アルゼンチンのランドスケープアーキテクトの女性の割合の高さです。素敵な女性が多かったです。

■プログラム

1日目はアメリカ地区の大会の位置づけだったため、全てスペイン語でとのことだったので、私たちはAPRの気の合うもの同士で、隣国のウルグアイを観光をしながら過ごしました。2、3日目はプログラム通りのプレゼンテーションが講堂で行われ、色彩豊かな南米のランドスケープと経済的困難、政治的不安定さにさらされた危機感をアピールする内容が多かったと思います。パラレルセッションの形式を取らなかったのは、応募数が少なかったからでしょうか?ですので、構内で英語の同時通訳ヘッドホン使用で、全てのプレゼンテーションを聞くことができました。高野さんの基調講演が大とりで、多大な拍手と、降壇後の記念撮影やサインの人だかりが出来たところは、日本の皆さんにも見て欲しかったです。素晴らしい締めでした。

高野さんの基調講演 大トリを務め大好評
高野さんの基調講演 大トリを務め大好評

■ガラ ディナー

その後、ブエノスアイレスのタンゴ劇場で一番の老舗のカフェ デ ロス アンジェリトスで行われました。立食式だった前回のオークランドと比較すると、テーブルでコース料理を頂く形式で、自由な会話と社交のチャンスとしては限られていましたが、タンゴの迫力は一生忘れることのないパフォーマンスを間近に見ることができ幸運だったと思います。

ガラディナーのアルゼンチン タンゴ
ガラディナーのアルゼンチン タンゴ

■視察旅行

4コース提案されていたのですが、悪天候の為に実施されてたのはティグリだけだったようです。ティグリはラプラタ川の河口に点在する中州群が高級別荘地となった地帯で、ボートで市内の港から一時間かけて行く方法と、陸路で接近して渡し船に乗る方法とあります。その中の、イスラエル デスカンゾという、彫刻コレクションのある広大な庭園を見学しました。雑誌のモダンリビングを切り取ったような建物、スペースを巧みに利用して展示された大型彫刻群、洗練された植栽など、船上からは想像もできない世界で贅沢な時間を過ごせました。

左が著者
左が著者

■閉会後

閉会後、また丸一日、IFLA APRとヨーロッパのリーダー達(大体30~40代)で市内観光をしつつ、色々な話をしながら親睦を深めてきました。ほぼ全員、世界大会や地区大会をホストしたり、近年中開催に向けてプロジェクト進行中である国だったので、盛んな情報交換が行われました。

実を言うと、このイベントの合間や後のオフタイムに、本音で相談したり公に出来ない話がされたりと、重要な時間だったのではと思います。会長を務める高野さんからの報告にもありますが、新しい会長と役員組織の新体制が始まります。

新リーダー間の結束を確認する動きに日本がはぐれなかったのは、長旅の甲斐があったと自負しております。(グループに入り込めずに、手ぶらで帰ってきてたら、それこそ遊びに行ったのも同じですよね。。。)

 

永村 裕子 Nagamura Yuko

1991年に渡英し、1999年リトルカレッジ(英国)ランドスケープデザイン学部卒業。1999年~2009年、英国、アイルランド、ポルトガル、ドバイの造園設計事務所に勤務。
2010年より、西日本短期大学緑地環境学科非常勤講師。IFLA Japan入会。