IFLA Japan と永村

永村裕子

■はじまり

 2009年 、10年超の海外での留学と造園設計事務所勤務があっさり終了し帰国しました。そして、自分のこれからが見定められなかった日々から、やっと故郷熊本に落ち着き出した頃にIFLA Japanと出逢いました。三谷副会長と初対面の日です。初対面の三谷副会長からお誘いを頂いての入会でした。「何の会だか分からないし、敷居も高そうだけど、私のような迷子でも5,000円(当時の入会費)で仲間にいれて貰えるなら、入ってみてもいいかな?」当時の“開ければ判るかも”と、福袋を買うのに近い不確かな期待感を覚えています。悲願の入会を果たしたと書くのが大人なのかもしれませんが、私の後に続いたIFLA友も、きっと同じパスを辿ったと思います。

 

 さて、福袋の中身は、「開けてみないとわからない扉の鍵」と「PR広報と会員増強の任命」: IFLAジャパンとは、“会費を納めれば、好い事起こりますよ/会員になれば世間から一目置かれますよ” 的な協会ではなく、実働部隊が必要で、そしてそこに私がいた。そんな風景が見えました。

 

■IFLAの醍醐味

 開けてみないとわからない扉の鍵。これは全会員の福袋にも入っています。扉を開けないままでは、ただのガラクタです。

 

 扉を開けることに例えたのは、IFLAとその分科会が主催する数々の大会、シンポジウム、コンペティション、賞へのアクセスです。

 これまで3回の世界大会(スイス、南アフリカ、ニュージーランド)と3回のAPR(アジア環太平洋地区)文化的景観シンポジウム(韓国、マレーシア、インド)へ参加しました。一見さんから、回を重ねるたびにIFLA友との再会を喜び励ましあいます。そして各国の水準と傾向に触れながら知見を高めることが実感できます。また、Foodscapeという、高尾忠先生と木藤亮太さんとのプロジェクトを発表する機会に恵まれ、世界中からの好意的な反応に、挑戦なしでは得られない感動を経験しました。日本国内での日々の取り組みを、全く別の角度と高度と広がりから見つめることは、今後の糧となるはずです。


左:2011年12月 IFLA APR文化的景観シンポジウム 韓国にて

右:2013年ニュージーランド大会にて 講演の模様


左:2012年南アフリカ大会にて

右:2012年12月 IFLA APR 文化的景観シンポジウム マレーシア にて

 

 また、ポスタープレゼンテーションや発表の翻訳者として、星野裕司先生、田中尚人先生、徳永哲さんの発表に関わり、日本からの情報発信のお手伝いが出来たことも喜びです。私の知る限り、学生・プロ両方で最強の受賞国・中国ですが、会場で顔を合わせるたびに、日本からの積極的な参加を促されます。現在の発表数を皮切りに徐々に参加者を増やし、行く行くは受賞者を祝う日が来ることを願わずにいられません。APRアジア環大平洋地区の文化的景観シンポジウムは、2016年(以降)の日本開催を強く要望しています。

 

 また、2国間の交換留学や単体の企業間のインターンシップでは得られない、世界のランドスケープ界の now & best が一堂に揃うのも世界大会です。著名なランドスケープ アーキテクト(主に基調講演者)との立ち話やTOPOS誌など有名誌への掲載などのご縁を手繰り寄せるチャンスが大会を覆っています。海外留学や進出の足掛かりとしてのネットワーク構築を一度に複数国と出来るのも魅力です。

 

 PR広報と会員増強も、不慣れながら情報の共有とIFLA友の獲得に努めて参りました。

 

■IFLA Japan への夢

 既述を繰り返しますが、IFLA Japanがこれから世界と日本のランドスケープ アーキテクトを結ぶチャンネルとして充実して行くことが、私の願いです。大会やシンポジウムごとに、この素晴らしい機会を共有できるのが、現状の一桁の人数のままでは非常に勿体無いです。特に若い学生はIFLA Japan支援のもと、一度は広い世界を経験して欲しいし、先生方にも背中を押して頂きたいと思います。

 

 研究やビジネス発表の質と量を高め、世界との交流が活発になり、職能の発展と喜びに貢献できるようになれば、IFLAジャパンの活動内容を不確かな期待を寄せた 福袋 に例えたものが、お値打ちものだったと納得できるようになるかもしれません。

 

 諸般の事情により、PR広報と会員増強の任務を一旦休止し、国内団体間との政治的なイシューからも距離を置いています。しかし私が考えるIFLAの本質的な活動: 世界への研究発表やビジネスネットワーク構築、職能人生を豊かにする場所への橋渡しへのお手伝いが、体制が整った日にまたお声が掛かり、再開できれば幸いです。

 

 最後に、キャリアも不足、お作法も業界相関図も分からない私を辛抱強く励ましご指導くださいました高野会長、三谷副会長、常任理事の皆様、旧くからの功労者の皆様、現広報の西山さんと全てのIFLA友へ、厚くお礼申し上げます。

 

永村 裕子 Nagamura Yuko

1991年に渡英し、1999年リトルカレッジ(英国)ランドスケープデザイン学部卒業。1999年~2009年、英国、アイルランド、ポルトガル、ドバイの造園設計事務所に勤務。
2010年より、西日本短期大学緑地環境学科非常勤講師。IFLA Japan入会。