『海外志向』

大貫真樹

町を歩き、車窓から眺め、書籍を探し、周囲の人に聞いたり・・・、
植物の種類や使い方、床の素材やテクスチャ、空間全体の雰囲気をああでもないこうでもないと創造する。

こうして小さな三層住宅のテラスガーデンは少しずつかたちになっていった。ルクセンブルクとベルギーを訪問した時に、現地友人の新居改装に伴って庭の提案をしてみようか、という話になり4週間の短い滞在期間中にアイデアを提供した。心地よい緊張感と集中力、新しい植物やランドスケープ空間に出会うワクワク感、非常に充実した貴重な時を過ごし、やればできるものだと達成感を得ていた。

■夢

ありえないことかもしれないけれど想像してみる。世界中のどこへいっても紙と鉛筆だ け持ってランドスケープの仕事をしている自分を。最高のクライアントに最高の作り手と 一緒にものづくりを進めるドキドキするようなプロセス、こうして携わった場所で一つで も多くの笑顔が生まれること、こんな夢を描いてみる。最近は非常に現実主義的にものご とを考えるようになり、こうあれば楽しいな、というような希望や夢を持つことを忘れか けていた。この原稿作成のおかげで、自分の目標を振り返って考えるきっかけになってい る。この話はIFLAにかける夢の内容ではないけれど、IFLAの活動が夢の実現のための一 手になると期待している。

■ IFLA Japanの活動

IFLA 入会にはいくつかの理由があった。

  • 海外のランドスケープアーキテクトとの交流や情報交換 
  • 海外に興味を持つ同世代とのつながり
  • 海外のランドスケープ業界の動向を知る

 これらのことがWEBなどの情報を通じて行われるのではなく、現場で体感したい思い がある。入会から一年経過して感じることは、東京での講演会やイベントが多く、関西を 拠点とする私には結局のところ直接的な交流や情報交換ができていない。これからは他地 域での開催を予定しているとのこと、少しでも関西方面での活動に協力ができ、貴重な時 間を共有できれば大変うれしく思う。

このような活動をイメージしてみる。 実践ワークショップ事業?と題して、実際、日々仕事に携わっている意欲的なランドス ケープアーキテクトを対象に、海外デザイン事務所と日本の事務所とのエクスチェンジプ ログラムを行う。数週間の滞在期間で計画、設計など各々の業務ステージにかかわらず実 際のプロジェクトに参加し、具体的な提案や成果を残す。自身の体験を思い起こせば楽し そうな試みと思う。シンポジウムやパーティの場ではない、大人の「本気」交流活動とで も言いましょうか、ダイナミックな国際交流を実現してみたい。現実には予算という大き な壁がありそうだが・・・。

ダイナミックな国際交流やIFLA へ興味をそそられた理由といえば、今日までの海外経験も一役買っている。

●北海道のハブ空港

北海道の事務所勤務時代は、たくさんの「海外」体験をした。テンウィウィ、アセンナ、 ダニエラ、パトリシア・・・通りすぎていくたくさんの外国人オープンデスクとの交流、 海外に籍を置くランドスケープアーキテクトとの出会い、海外コンペへ参加するなど、北 海道の片田舎にいながらあたかも海外で仕事をしているかのようであった。空港のように 様々な人々が訪れてはまた飛び立ちと繰り返し多様な出会いの機会があった。自分の知ら ない新しい世界を知り想像すること、書籍やインターネットから知る表面的な情報ではな く、人と人のコミュニケーションを通じた暖かくて奥行きのある知識を得ること、地域の 小さな社会に閉じこもらず広い視野を持って自身の立ち位置を再認識できる時間、これら の経験は心躍る楽しさを肌に刷り込ませてくれた。


●マレーシアのHot&Hot

北海道での待ちの時間を経て、海外へ自ら動きだすチャンスにも恵まれた。 慣れない土地では公私ともすべてにおいて新鮮な時が過ぎ、歴史、文化、言語の違いに 触れ、新たな技術を学び、今でも続くローカルスタッフとの出会があった。業務を進める うえでの慣行は違っても、ランドスケープアーキテクトとしてするべきことは日本と変わ らず常に強い気持ちを持って仕事に臨んだ。人種や言語の違いを踏まえた作業調整やコミ ュニケーションは日本では経験できない面白い体験となった。食事は辛く気候は暑く、あ る意味あくせくしない南国の仕事時間が流れる中で、日本人だからできることを熱く胸に 秘め過ごした時であった。


■おわりに

「チャンスがあれば海外へ」、未だに大切にしている言葉で、これまでの経験も無駄にならぬようこれからも視野の広いランドスケープアーキテクトを目指したい。ついつい堕落しがちな自身の性格に、IFLAの活動のようなボーダレスで刺激的なチャンスをぶつけて、 夢を持ちながら一歩ずつ前へ前へと進み続けたいと思う。

  • 一人でも多くの友に出会いたい 
  • 一つでも素晴らしい技能を身に着けたい 
  • 一つでも多くの心地よい場を残したい 

日本だけではなく世界中で、IFLA Japan をひとつのきっかけとして。

大貫 真樹 Maki Onuki

株式会社ランドスケープデザイン 勤務
http://www.ldc.co.jp/index.html